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仙台高等裁判所 昭和47年(く)23号 決定

少年 K・O 昭三〇・二・二生

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨および理由は、少年作成名義の抗告申立書に記載のとおりで、その要旨は少年の非行は原決定において三分の一ばかり過大に認定されており正しくないばかりでなく少年は既に心の底から反省し正業につき真面目にやつてゆく決意をしているので、著しく不当な原決定を取り消されたいというのである。

しかし記録を検討すると、少年が審判に際し送致にかかる全非行事実のうち金額の相違を主張した昭和四七年一〇月六日付送致書記載の事実四については原決定摘示の事実一の(16)のとおり少年の主張と符号する認定がなされており、その余の各非行事実における各被害の金品はそれぞれ被害届の記載と合致しており原決定の認定したところに疑を挾む余地はなく、少年が度重なる非行による被害金額が思つていたより多額であつたという感じを抱いたからといつて原決定の認定を不当呼ばわりするのは正当でない。また、少年が原決定のとおり二〇数回にのぼる深夜の店舗忍込窃盗を重ねたことの責任はその被害弁償のされていないことは別としても簡単に反省したとか後悔したということでつぐなえるものではなくもつと重大なものであることを知るべきであるし、少年に今期待されていることは少年が言うような親に孝行したり社会のために尽すということよりもむしろ他に迷惑をかけないで生き抜ける丈の強い人間になることであり、鑑別の結果を考えあわせると少年の健全な育成のためには施設における基本的な生活訓練こそが不可欠と思料されるので、少年のいうような「無駄な一年」という間違つた考えをまず改め自分自身を鍛えることに努力すべきである。以上のとおり原決定はなんら違法でも不当でもなくまことに適切妥当であるから、本件抗告は理由がなく少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条に則り棄却すべきである。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 細野幸雄 裁判官 深谷真也 渡辺公雄)

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